「最後の締めは、やっぱり王餃子で」
そんな声が、中洲の夜には今も響きます。深夜にもかかわらず、行列ができるのはもう当たり前。餃子とラーメンで締める常連客たちの背中を見送る店内で、鍋を振るうのは二代目店主・山肩政剛。独学で腕を磨き続け、四半世紀以上、変わらぬ味を守り抜いてきました。
王餃子のルーツは、1964年、福岡での創業にさかのぼります。
その原点はさらに遡り、1957年。広島で創業者の父が一人の台湾人料理人・王さんの屋台を訪れたことがきっかけでした。何度も足を運び、王さんの味に魅了された父は、教えを請い、屋台仕込みの餃子とラーメンを広島で広めました。その味はやがて親戚に受け継がれ、現在も広島の老舗として愛されています。
父は「福岡ならこの味が通用するかもしれない」と思い、東京行きを断念して中洲の地へ。しかし、当初はとんこつラーメンが主流の博多では、広島仕込みの醤油ラーメンはなかなか受け入れられず、苦戦が続きました。ところが、時代とともに博多にも他県からの来客が増えると、ラーメンや餃子の魅力がじわじわと広がり、締めの店としての地位を確立。中華の一品料理を減らし、ラーメンと餃子に特化したことで、今のスタイルが出来上がりました。
現店主・政剛は、もともと東京の大学に進学し、家業を継ぐつもりはなかったと語ります。しかし、25歳のときに父から戻ってきてほしいと頼まれ、店に立つことを決意。料理の経験が全くない中、昔ながらの職人たちに混ざり、誰にも教わらずにひたすら鍋と向き合う日々が続きました。
「提案しても『やりたいならお前がやれ』って突き放されて。でも意地で毎日やり続けて、ある日『手伝おうか?』って声をかけられたときは、本当に嬉しかったです」
味の進化は続きます。常連客の一言で、餃子の野菜から出た旨味たっぷりの汁をラーメンのスープに活用するようになり、十年前には麺も製麺所から自家製へ。今もなお、先代の教えと日々の工夫が重なり、唯一無二の味を生み出しています。
王餃子 二代目店主 山肩政剛

当店のこだわり

餃子の餡づくり
当店の餃子のルーツは、一人の台湾人料理人・王さんから始まります。創業者の父がその屋台の味に惚れ込み、教えを請うたことで受け継がれた秘伝のレシピ。その味は、祖母から現代の私たちへと引き継がれています。餡にはキャベツ、玉ねぎ、たっぷりのネギとニラを惜しみなく使用。すべての野菜を丁寧に刻み、手間を惜しまず混ぜ合わせます。さらに、具材から出る水分をしっかり切ることで、旨味が凝縮され、濃いめの味付けに。これが、焼いても、茹でても、揚げてもおいしい、王餃子ならではの“食べ応え”のある一品です。
こだわりの自家製餃子皮
毎日お店で丁寧に手作りしている餃子の皮。小麦粉の配合や水分・油分のバランス、室温や湿度、水の温度まで、微妙な変化にも対応しながら、その日ごとにベストな仕上がりを目指しています。特徴は、噛んだ瞬間に感じるもっちりとした弾力と、口の中でスッととろける薄さ。厚すぎず、食感がもたつかない絶妙なバランスで、お酒の肴としても、食事の一品としても「もうひとつ」と箸が伸びる、他にはない餃子の体験をお楽しみいただけます。


鶏ガラスープのラーメン
スープの主役は、厳選した鶏ガラと 7 種類以上の野菜。じっくり 6 時間以上かけて炊き上げた後、一晩寝かせて味を落ち着かせます。丁寧にアクを取り除き、手間を惜しまず仕上げることで、すっきりとした中にも深いコクが感じられる、澄んだ味わいが生まれます。このスープに、自家製麺が絡むことで完成するのが、王餃子こだわりのラーメンです。
焼めしの“パラパラ”の秘訣
炒める瞬間の火力こそが、焼めしを決める。強火で一気に炒め上げるご飯は、一粒一粒がしっとり、ふっくらとしながら、パラリとほどける絶妙な仕上がりに。使用するのは、佐賀県白石地区の特別指定産地で育てられた国産米。甘みのある糖質、絶妙な粘りと硬さを併せ持ち、「町中華でここまでお米にこだわっている店は少ない」と自負しています。米の力と火の技が融合した、当店ならではの一品です。

店舗情報

店名:王餃子(ワンギョウザ)
住所:福岡市博多区中洲2-5-9
電話:092-291-2249
営業時間:17:30 ~ 深夜1:00
定休日:日曜日
席数:26席(カウンター18席、テーブル8席前後)
駐車場:なし ※近隣の有料駐車場をご利用ください。